HOMEWORKS2020に参加しました。

もう2ヶ月近く前の話ですが、、、

1月23日24日と大阪のPINE BLOOKLYNというイベントスペースで、

HOMEWORKS という展示のイベントに参加させていただきました。

その中で私は drawingBlobscapes という作品を展示させていただきました。

コロナ禍ということもあり、中には東京からリモートで展示される作家さんもいらっしゃいましたが、私は帰省も兼ねて厳重にコロナ対策を行った上で現地にて参加させていただきました。

ちなみに大阪移動で新幹線のグリーン車に初めて乗ったのですが、普段乗っているものと結構違って少し衝撃でした。広くてすげー快適、人もわりかし少なかった。

経緯

HOMEWORKSについて以前から名前は知っていて、参加してみたいなあと思っていた展示でした。たまたま会社の同僚から紹介いただいて、いい機会だったので、ぜひにと参加させていただきました。

当初はVRゴーグルに使われるような高密解像度モニタを使って、

一見写真や絵画に見える展示物の中で一部映像が表示されているという作品を作ろうと考えていたのですが、

VRモニタとPCの相性が割と限られていたようで、予定していたPCではモニタに映像が正しく表示されないという自体が発覚し、展示内容を再検討しました。VRモニタはPC選んで別の機会に使ってみたい。

なにか使えそうなアイデアないかなと過去のプロジェクトなど見ていると、ちょうど1年前にopenFrameworksで作成していた実験プロジェクトを発掘し、自分としては改めて好きな表現だなーと思ったので、こちらを作品として仕上げてみることにしました。

作品について、

概要的な話をすると、

openFrameworksを始めてからkyndさんというアーティストを知り、プログラミングで作るアナログな表現に魅力を感じていました。

作っていく過程で、

抽象的に変換された自分の像を見ることで、 自分にしかそれは自分だとわからない表現 が面白いなと思ったり、

自分は写真に映るのが少し苦手なので、こういう曖昧な像の残り方は好都合だと思いました。

ちょっと余談ですが、、、

記憶を探るには小石程度のきっかけで良いとパクノダが言ってました。
実際には、記憶は形を留めないけれど。美化され風化されるものだけれど。
個人的に思い出すということに関しては、別に正確でなくても十分に意味は果たしている、
むしろ正確に思い出すことはそこまで重要でなく、美化され風化され、
都合よく形を変えた方が思い出すということは豊かな気がします。

手書きのようなイラストチックな表現を目指した結果、いままでなんとなく好きだった表現に少し理由が見えてきた気がしました。

同じ絵でも、他人にはわからないけど、自分にとってはなんとなく理解できるものは、愛着を持ちやすいと思います。自分にだけの度合いが強ければなおさら。

また一見なんの手がかりにもならない写真や映像が、ある人にとっては、何かを思い出すきっかけになればいいなと思っていました。エモ。

イラストチックにするだけであれば、映像をアニメ調に変換するとか、鉛筆画風に変換するとか、シェーダーや機械学習を使った手法がたくさんあります。

それも悪かあないのですが、別の手法をとった場合、何かしらの制限によって別の手法が必要になった場合、自ずと差別化された新しい表現が生まれるものかもしれないです。

まあ今回の話では時間や自分の能力などの制限が仕方なく発生している部分もありますが。

だからこそ、このプロトタイプとしてゆるく展示できる場所には大きな意味があるとも感じました。


技術的な話をすると、

主な技術としてはopenCVのfindContours , k-meansというものが使われています。

撮影した映像の1フレームを対象にk-meansの処理を掛けることで、その1枚で使われている主な色を抜き出します。

K-meansとは、ものすごくざっくりと説明すると、複数ある値を指定したK個のクラスに分類する手法です。普通、平均を出すと、複数の値から1つの平均値を取り出しますが、それが複数個取り出せるみたいな。(今回は10個とか)

以下の図でいうと、XYにたくさんプロットされている点を3つのクラスタに分類すると、各点はどの分類に当てはまるか、またその主となるXYは(薄い大きな+OX)どんな値か。みたいな。

そして、取り出した色をもとにfindContoursという処理をあてます。

findContoursについてもざっくり説明すると、1枚の画像から輪郭を検出するような処理です。
ピクセルごとに周りのピクセルと比較して明るさに大きなギャップがあるピクセルを輪郭のエッジとするみたいな。
で今回は、色を指定してこのfindContoursをかけ、指定した色の輪郭を検出するということをしています。

こうして検出された輪郭はいくつかの点の情報を持っています。この点をつないで輪郭線を書くわけなんですが、このときこの点の数を間引いていくことで抽象的な表現にしています。要は多角形を三角形に近づけていくみたいな話。
図形に近づけることで少しおしゃれな見え方になったりしてたのしい。gifでみると変化が見られたりしてたのしい。

でまた、この輪郭のことをContourとかBlobと呼ぶことをよく見かけます。
この輪郭・塊の集合で表された像を描いていく作品だったので、タイトルをdrawingBlobscapesとしました。

ちなみに本作はopenFrameworksを使用して制作したのですが、
K-meansは内部的にはピクセルに対して行われる処理ではあるので割と重たい処理です。なので、この処理は別スレッドで処理するようにしています。
来場者の中にopenCVに詳しい方、openFrameworksを触っていた方もいらしていて、まさにスレッドなど自分としては少し頑張った部分について質問していただいた方がいて嬉しかったです。

その他、今回はほぼshaderを使っていないので、今後のブラッシュアップもいろいろできるかなと思ったり。ただ、使わなかったからこその表現であった気もします。

おおまかな作り自体は1年前の元プロジェクトの時点でできていたものの、
展示用に最適化であったり、パラメータの調整的なところであったり、
簡易でマッピングの機能もいるわと思って、ofxWarpMeshで対応したり。

あとWebカメラの映像をそのままこの変換に掛けるのでなく、彩度やコントラストの調整は事前にWebCamSettingというアプリを使って処理しました。
その調整くらいならプロジェクトに仕込んでもよかったけど、ギリギリまで別の所を詰めるべきだと思ったので、そこは既存のアプリをありがたく使おうと割り切りました。こういう展示なら十分。

感想

思っていたよりもお客さんが来てくれていて、だけど会場が広くて込み過ぎもせず、とてもいいイベントに参加させていただきました。

めちゃくちゃ良いスペースだったのですが、もう営業終了してしまうということで非常に残念。

リアルな展示ではお客さんから直接感想やフィードバックを貰えるので、やった実感があって楽しかったです。

展示しながら人がいないタイミングでパラメータいじってみたり、gifでも出力しておきたいなと思って、急遽1分毎くらいに3秒分くらいを連番で書き出す機能を実装してみたり。個人的にはライブ感のある展示で退屈しなかったです。これもゆるめの展示だからこそ。

プロジェクターを割と大きなスペースにドンと投影するのは久しぶりだったので、やっぱりそれだけで少し嬉しかったです。

コロナが落ち着いてきているので、また少しずつこういうイベントが増えて参加できるといいなあ。

ご来場いただいたお客さん、企画運営などしてくださった方々、参加作家のみなさま、お疲れさまでした&ありがとうございました!!

by shugohirao